Uploaded July 03, 2014 Magnetically Transported Cathodic Vacuum Arc Deposition Magnetically Filtered Arc Deposition (FAD) |
磁界によってプラズマが輸送される原理は次のとおりです。これは,シールド法においても同様です。また,真空アークプラズマだけに限りません。
磁界中に荷電粒子(電子・イオン)が入射すると,荷電粒子は磁界の影響を受け,磁力線に絡むようにサイクロトロン運動をします。サイクロトロン運動の半径はラーモア半径(Larmor
radius)とよばれます。ラーモア半径 rL (m) は,
で表されます。ここで,B;磁束密度 (T),m ;荷電粒子の質量 (kg),T:エネルギー (eV),Z:価数,e:素電荷 (C) です。真空アークプラズマにおける代表的な荷電粒子のラーモア半径を計算した結果を下図に示します。
真空アークプラズマ内の電子のエネルギーは約 2 eV です。従って,外部磁界が約
1 mT および 10 mT のとき,ラーモア半径は,それぞれ,5 mm および 0.5 mm
となります。一方,同様な磁界条件におけるイオンのラーモア半径は 20 mm〜10
m(あるいはこれ以上)です。従って,真空アークプラズマに磁界を印加した場合,電子は容易に磁界に絡みますが,イオンはそうでもないということが分かります。しかし,電子とイオンとが分離しようとしても,クーロン力で引き戻されます(双極性拡散:ambipolar
diffusion)。つまり,以上のことから,真空アークプラズマの磁気輸送では,「まず,電子が磁界によって輸送され,その電子の動きにイオンが追従する」,というふうにプラズマ自体が輸送されるということです。この様子を下図に示します。
各種真空アーク蒸着システムによるシリコン基板への成膜例
【アルミニウム膜】・・・ドロップレットが液体状なので,Torus-FADで十分ドロップレットが除去可能
Linear-FAD法 | Torus-FAD法 |
【ダイヤモンドライクカーボン(Diamond-Like Carbon)膜】・・・ドロップレットが固体状なので,各種シールド(SCAD)法や従来のFAD法(Linear-FAD, Torus-FAD)では,除去が困難。T-FAD法が極めて有利。
Normal (CAD) 法 | Shield (SCAD) 法 |
Linear-FAD法 | Torus-FAD法 | T-FAD法 |